DX企業へフルモデルチェンジの変革に挑む、富士通の人事戦略

  • 富士通株式会社
  • 理事 総務・人事本部長
  • 平松 浩樹 様

2019年9月に行われた経営方針説明会で、「IT企業からデジタルトランスフォーメーション(以下、DX ※1)企業への転身を目指す」と表明した富士通株式会社(以下、富士通)。同年6月に代表取締役社長に就任した時田隆仁氏自らCDXO(Chief Digital Transformation Officer:最高デジタルトランスフォーメーション責任者)となり、全社一丸となって変革に取り組んでいます。変革は事業方針だけにとどまらず、信頼されるDXパートナーとなるべく、社内プロセス、カルチャー、人事制度などの全面的な改革も進めています。現在社内で起きている変革、そして目指す未来について、同社の理事であり、総務・人事本部長の平松浩樹氏に、株式会社ビズリーチ取締役HR Techカンパニーカンパニー長の多田洋祐が伺いました。
(所属・役職等は取材時点のものとなります)

※1:デジタルトランスフォーメーション(DX):デジタル技術を駆使し、企業のビジネスモデルや経営、業務プロセスを変革すること、ひいては産業や社会のあり方にも変革をもたらすこと。

富士通株式会社 理事 総務・人事本部長 平松 浩樹 様

株式会社ビズリーチ 取締役 HR Techカンパニー カンパニー長 多田 洋祐

変化の原動力となる「キャリア人材」のオンボーディングを強化

多田:IT業界は急速な技術革新により、この10年の間にビジネスモデル、そしてプレーヤー(事業者)も大きく変化してきました。国内ITサービス市場において1位である(※2)御社が「DX企業への転身」を表明するに至った背景についてお聞かせいただけませんか。

※2:国内ITサービス市場売上ランキング 2018年(IDC Japan)

平松氏(以下、平松):一番の大きな変化は、クラウドの急速な普及です。これにより、企業のITシステムを「守る」役割がメインともいえる従来型のIT市場は年々縮小し、デジタルがビジネスを生み出す「攻め」のDX時代を迎えました。

当社はこれまで、お客様が思い描くビジネスの実現を支援し、システムの要件定義や構築をしながらより良いものを作り上げていく、いわば請負型のソリューション提供が主流でした。しかし、DX時代においては、ビジネスをさらに推進させるキードライバーとして「デジタル領域での成長」が欠かせません。これまで培ってきた豊富な知見をベースに、多様なパートナーと共創し、今はまだ想像もできないようなイノベーション・価値を、デジタル領域で生み出せると確信しています。そしてこのビジネスモデルへシフトするためには、「社員の意識改革」が不可欠です。

多田:御社のように歴史があり、3万人以上の社員がいる大企業において「社員の意識改革」は、簡単ではないと思います。改革にあたって、どのように優先順位をつけて取り組まれているのでしょうか。

平松:「社員の意識を変えるには、人事制度の影響が非常に大きい」という経営トップの判断のもと、まずは人事制度の大改革に取り組んでいます。人事制度に関しては、これまでもさまざまな取り組みをしてきたのですが、今回の改革は「フルモデルチェンジ」といえるでしょう。そして多様なバックグラウンドを持った人材が組織に加わることが、変化を起こすきっかけになりますので、これまで以上にキャリア採用を強化しているところです。

多田:これまでキャリア採用を積極的に行っていなかった企業では、キャリア人材を迎え入れることに慣れておらず、その結果、入社したキャリア人材がそれまでの経験やスキルを発揮できないケースも少なくありません。キャリア採用で入社した人材に活躍・定着してもらうために、御社ではどのような工夫をされているのでしょうか。

平松:もともと当社のビジネスは非常に規模の大きなプロジェクトが多く、チームで取り組むものばかりです。お互いをリスペクトしながら取り組み、チームで成果を出していくという進め方に慣れており、多様性を受け入れる素地があると思います。

人事としては、キャリア人材が活躍・定着するまでの期間を短縮し、より早期にパフォーマンスを最大化できるよう、2019年9月から、入社後90日間のフォロー体制を構築しました。一人一人に専任のアドバイザーがつき、入社時のオリエンテーションだけでなく、現場配属後も個々に合わせたサポートをしています。

多田:「即戦力」と期待をされて入社したキャリア人材が、会社や組織になかなかなじめず、期待していたパフォーマンスを上げるまでに時間がかかる、また、最悪のケースでは早期離職してしまう。そのような事態を回避するため、新卒、キャリア採用問わず新たに入社された方が会社になじむための、いわゆる「オンボーディング」に力を入れる企業は増えつつあります。しかしながら、御社のように一人一人に専任アドバイザーがつくほど、手厚い体制で受け入れる企業はまだ多くありません。なぜそこまでオンボーディングに注力されるのでしょうか。

平松:当社ではキャリア採用で入社した社員を対象にアンケートを実施し、仕事のやりがいやチームの雰囲気、お客様との関係性などをヒアリングしているのですが、「入社当初、組織にスムーズになじめなかった」という意見が複数ありました。この結果を経営層にも展開し、キャリア採用のオンボーディング強化の必要性を伝えたところ、社長の強い意志のもと、施策がスタートしたのです。

キャリア採用の目的は、これまでなかった風を社内に吹かせ、組織を活性化させ、「異文化」を受け入れることの価値を再認識し、より創造的な組織へ変化させることです。人事としては、1日も早くキャリア採用で入社した社員が変化の「原動力」になるよう、現場だけに任せることなく、不安や疑問などを解消していくサポートをしています。

また、個別のサポート体制だけではありません。キャリア人材同士の交流はもちろん、社長など経営層との交流を通して思いや期待などを直接伝える場を作っています。これにより、多様なバックグラウンドのキャリア人材が、職種を超えてコラボレーションし、イノベーション創出のきっかけになることを期待しています。

多田:キャリア採用を強化したことによって、既存の社員にも変化や気付きなどはありましたか。

平松:私たちがこれまで「当たり前」だと思っていたことに対して、新たな視点で指摘してくれるので、非常に刺激を受けています。改善すべき点は新たな意見を取り入れ、よりよくしていく。また、当社が長期にわたり培ってきた信頼があるからこそいただけるビジネス機会に対しては、より一層の感謝の気持ちと責任を持って取り組むなど、意識が高まっているようです。

 

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