人事・採用戦略にマーケティングの視点を取り入れる

  • 株式会社ニトリホールディングス
  • 組織開発室 室長
  • 永島 寛之 様

「2032年に3,000店舗出店、売上高3兆円達成」という大きな目標を掲げ、世界規模でさらなる市場拡大を狙うニトリホールディングス。この目標を達成するには、採用や人材育成に関しても既存の枠組みにとらわれない視点が必要です。ニトリの組織開発室室長である永島寛之氏は、元々マーケターとして15年以上活躍されていました。そんな永島氏のマーケティングの視点が生かされたニトリの人事・採用戦略を、株式会社ビズリーチ取締役の多田洋祐が伺いました。
(所属・役職等は取材時点のものとなります)

株式会社ニトリホールディングス 組織開発室 室長 永島 寛之 氏

株式会社ビズリーチ取締役 キャリアカンパニー カンパニー長 多田洋祐

 

アメリカの人事戦略に刺激を受け、人を中心とした人事へ

─長年マーケティングを担当されていた永島さんが、御社で人事を担当することになった経緯をお聞かせください。

永島氏(以下、永島):前職でマイアミに駐在してプロダクトマーケティングに携わっていたとき、初めてアメリカの人事戦略のもとで働く経験をしました。アメリカでは個人の専門性を高めるジョブ型を主に採用しています。社員は自分の専門性を生かせないと感じると、活躍できる他の会社に転職してしまいます。そのため各企業の人事部は、社員が力を発揮できる環境を常に用意する必要があります。

そんな折、偶然ニトリがカリフォルニアに出店したことを知りました。それでニトリのことを調べたところ、「10年後に売り上げと利益を10倍にする」など、大きいビジョンを掲げていたので興味を持ちました。

私自身、ちょうど40歳という区切りの年でした。「20代は自分のため、30代からはチームのために仕事をしてきた。40代からは人の育成のために仕事をしてもいいかな」と考えていたんです。

多田:マーケティングから人事にキャリアチェンジするケースは珍しいですね。アメリカでは30年前から「採用はマーケティングだ」と言われてきました。候補者となる求職者のニーズに応え、求める情報を人事が発信し、今後の採用では求職者データべ―スも活用していく考え方です。また、人事だけでなく、社員の満足度を上げることで、社員が自社の情報を発信する。仮に社員が転職しても、元社員の口コミで新しい優秀な人が入社する。まさにマーケティングの手法です。

永島:アメリカのマーケティングでは生活者、つまり人をセンターに据えることが基本でした。一方、日本のマーケティングの中心は会社や製造者の事情です。アメリカの考え方を知り、「人事も人をセンターに据えるべきだ」と思いましたね。その意味では、マーケティングに携わった経験が、今の人事業務でも役立っています。

多田:マーケティング思考で人事を捉えることは日本企業にとって必要なことだと思いますし、今後さらに重要性が増すと思います。ちなみに御社はどのように採用活動を進められているのでしょうか。

永島:自分たちのポジショニングを変更することでターゲットを広げています。流通業の有効求人倍率は13倍もあり、選考したくともそもそも人が集まらない状態です。これが製造業になると有効求人倍率が2倍まで落ちます。ニトリは小売りの流通業のイメージが強いですが、ベッドは針金を仕入れてスプリングから作り、ウレタンも自社製造しているので、自分たちのポジショニングをメーカーと定義して採用活動を進めています。

多田:新たに興味を持ってくださった方にご入社いただくには、意思決定過程の面談や面接も重要ですね。面接はどのように取り組まれているのですか。

永島:ニトリに興味がなかった方にも興味を持っていただくために、面接では求職者の好奇心を探り、ニトリとつながる部分をうまくアピールする必要があります。ですので、選考の仕方も工夫しています。結果、優秀な方ほどニトリの意外性に惹かれて入社されます。

例えば、新卒採用の面接はグループディスカッションを実施せず、1対1でお互いの接点が見つかるまで話し合います。新卒採用部の部長をしていたときは、最終面接は全て私が担当しており、2018年は約1,500人の学生と会いました。

合否を決めるうえで学生の成績を重要視する企業もあるようですが、私はそれよりも、学校で何を学んできたかを重視します。そこから彼ら・彼女らの好奇心や学生生活を想像して、ニトリとつながる要素を導き出します。

そして、インターンシップで来てくれた方たちも大事にしています。彼らに真摯に向き合えば、たとえその方たちが入社に至らなくても、後輩を連れてきてくれることがあります。

多田:まさにマーケティングの視点ですね。扱うものがプロダクトやサービスでなく「人」であるだけで、人事は事業運営を行うのとなんら変わりないと私は思っています。その視点から考えると、マーケティングという人事と全く違う畑から、永島さんのような人事が生まれることも納得がいきます。

 

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