エネルギー自由化時代の「総合エネルギー企業」としての挑戦

  • 東京ガス株式会社
  • 常務執行役員
  • 岸野 寛 様

明治181885)年、渋沢栄一らの尽力により東京府から瓦斯(ガス)局の払い下げを受け、「東京瓦斯会社」として誕生した東京ガス株式会社。創立から130年以上、社会インフラ事業者として、社会の持続的発展に貢献することを目指し、事業活動を行ってきました。技術革新や人口構造の変化、環境問題に対する世界的な関心の高まりなど、エネルギー産業を取り巻く環境は刻々と変化しています。2011年の東日本大震災を機に抜本的なエネルギー規制のあり方が問われた日本社会において、東京ガスはその変革にどのように対応し、変化に挑み続けていくのでしょうか。「エネルギーの自由化」によってもたらされた経営戦略と、それにともなう人事戦略の変化について、常務執行役員の岸野寛氏に、ビズリーチ代表取締役社長の南壮一郎が話を伺いました。
(所属・役職等は取材時点のものとなります)

東京ガス株式会社 常務執行役員 岸野 寛 様

株式会社ビズリーチ 代表取締役社長 南 壮一郎

創業以来、最も大きな変革の真っただなかにいる

南:エネルギー業界は、この10年で最も大きな変革が起こった業界の一つだと思います。まずは、2016年の電力小売全面自由化、そして2017年の都市ガスの小売全面自由化に至った背景について、教えていただけますか。

岸野氏(以下、岸野):ご存じの通り、日本におけるエネルギー自由化は1995年から政府主導で段階的に始まりましたが、家庭用のエネルギーは今まで競争下にありませんでした。しかし、東日本大震災を機に一気に加速し、家庭用も含めた「小売全面自由化」へと向かったのです。電力業界とガス業界は、歴史的にも規制緩和が同じように推移してきましたので、2016年の電力小売全面自由化の翌年の2017年に、ガスは小売全面自由化しました。

南:日本の「エネルギー自由化」は、世界から見ると遅いのでしょうか。

岸野:遅いですね。例えばイギリスは、1980年代のサッチャー政権時代に「小さな政府」を掲げ、国営の水道、電気、ガス、通信、鉄道、航空などの事業民営化を推し進めました。1990年代にはドイツをはじめ多くの欧州の国々で自由化が進んでいます。電線やガス管自体の運用は規制下でなければ難しいものの、それを使った電力やガスの供給については事業者がいれば新規参入できます。

南:2017年から導入された「家庭用も含めたガスの自由化」は、御社にどのような変化をもたらしていますか。

岸野:当社の家庭用ガスは売上高、利益額ともに一定の規模を占めており、自由化のインパクトは非常に大きいです。特に2018年以降、電力会社や石油会社がガス領域への進出に力を入れ、他の都市ガス会社からの新規参入も増えています。人口減少が進む日本においても、東京への人口流入は減ることはなく、世帯数も増えています。他社が東京でのビジネス展開を目指すビジネスメリットは多分にあり、大変な競争になっています。

南:御社の長い歴史のなかでも、大変革の時期にあたるのですね。

岸野:まさにその通りです。明治181885)年の創業からこれまでの間で、当社のガスのお客さま件数が減少したのは関東大震災と第2次世界大戦の2度のみで、それ以外は順調に事業規模を拡大してきました。それが「エネルギー自由化」によって3度目のガスのお客さま件数減少の危機にさらされており、大変革の最中と言えるでしょう。

南:大変革中の不透明なビジネス環境において、御社はどのようなことに力を入れているのでしょうか。

岸野:「ガスと電気のセットプラン」の提供に力を入れていますが、これは電力会社をはじめ、各社が同じことをすれば、価格競争に陥ることは避けられません。つまり、サービスによる差別化が必要になります。

南:御社の電力販売件数が順調に伸びているというニュースを目にしておりますが、短期的には売り上げ拡大でこの自由化時代をリードし、今後はさらに戦略を変化させていくということですね。

岸野:はい。これまでガス業界は、事業拡大を促す先進的なガス機器や設備をメーカーと協力して開発し、それらの普及とともにガス需要を広げてきました。機器や設備の進化により、台所の火からお風呂の給湯、床暖房、さらにはご家庭での自家発電までもがガスからできるようになり、一世帯あたりのガスの使用量は増え、収益を伸ばすことができました。ただ、こうしたビジネスモデルへの投資ができたのは、一度ご契約いただいたお客さまが30年、50年と非常に長い期間ご継続いただける、という前提があったからです。

ガスそのものは、どの会社が供給しても同じです。「東京ガスだから提供できるサービス」を生み出し、お客さまに選ばれ続ける会社でいるためにも、われわれは新たなビジネスを創出し、どこにどれだけ投資していくべきかを見極めていかなければなりません。今やお客さまは自分が好きなエネルギーを「選び」、ときには「自給自足」し、さらには「投資する」こともできるようになりました。機器・設備・技術だけではなく、「ビジネスモデル」自体を見直し、さまざまなビジネスパートナーとの協業等により新たなサービスを共創することで差別化を図るなど、新たな戦略が必要不可欠です。

 

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