エネルギー自由化時代の「総合エネルギー企業」としての挑戦

  • 東京ガス株式会社
  • 常務執行役員
  • 岸野 寛 様

異業種コラボレーションのカギは「ヒト」

南:社会が発展してきた背景には、エネルギーの存在が欠かせません。御社が創業以来世の中へ与え続けたそのインパクトは、一ベンチャー企業には考えられない規模感です。そのような御社がこの先の未来に目指す姿について、ぜひお聞かせいただけないでしょうか。

岸野:エネルギーは人々の生活やあらゆる産業のベースとなり、影響力は大きいものです。そのため、2050年に向けて、世界がCO2の排出ゼロを目指していくなか、一エネルギー会社としてやるべきことがたくさんあります。天然ガスはCO2排出量が少なく、また、不安定な再生可能エネルギーと相性が良いため、その重要性はますます高まると想定されます。そこでまず、上流投資や海外でのLNGインフラ開発を一層推進していきたいと考えています。一方、CO2を排出しない再生可能エネルギーについても、20194月にフランスのエネルギー事業者とメキシコで陸上風力発電、太陽光発電などの再生可能エネルギー開発事業に取り組むことに合意し、プロジェクトをスタートさせました。

再生可能エネルギーは、風力であれば風が吹かないと、太陽光であれば曇りが続くと、エネルギーが作れないという不安定さがあります。今後は、不安定な再生可能エネルギーの「発電量予測」や、供給が不足した際の「他の電源でのバックアップ」「需要側の節電」といった新たなエネルギー価値の提供も重要になっていくと思うのです。そこにはこれまでのエネルギーを安定的に安全に提供する技術に加えて、「IT・デジタル」というキーワードが欠かせないでしょう。

南:ITは、業務フローにおいて、圧倒的な効率化や合理化を促しコスト削減を実現できるイノベーションツールです。効果的に活用できたならば、エネルギー業界に大きなインパクトを与えられそうですね。

岸野:お客さまの利便性を高めるうえでも、調達から販売を正確かつスピーディーに進めるうえでも、ITによる効率化は欠かせません。

世界の環境問題にどう取り組むか、社会にどう貢献していくかというマインドは大切にしながらも、生き残る企業となるためには、海外事業やデジタル事業など、新規事業への挑戦も同時にしなくてはなりません。先ほどお話しした「フリースタイル採用」をはじめ、先例にとらわれずに取り組んでいく風土も、この数年で着実に醸成できていると考えています。

南:これまでタッグを組んでこなかった領域同士のコラボレーションは、あらゆる業界で新しい価値を生み出しています。そういう意味では、私は「本業とは違う領域の人材」を獲得するための人材戦略の一つとして、「副業・兼業人材の受け入れ」をお勧めしています。

岸野:自社の社員に対し副業・兼業を促進するのではなく、外部から副業・兼業人材を採用し、自社で働いてもらうということでしょうか。

南:そうです。例えば、新規事業プロジェクトのメンバーとして、プロフェッショナル人材を副業・兼業枠で採用し、週に1回、期間限定で受け入れるとしましょう。ITのプロフェッショナルが、エネルギー業界のような巨大なインフラ産業の仕事に携われるチャンスはそうそうありません。しかも、現職の企業に所属しながら、副業として「エネルギー×IT」の新規事業プロジェクトに参加できるのであれば、手を挙げる人は多くいるはずです。

働く個人にとっては、実践的なリカレント教育(義務教育や基礎教育を終えて労働に従事するようになってからも、個人が必要とすれば教育機関に戻って学ぶことができる教育システム)の機会となり、その人の知識の深化やキャリアアップにつながりますし、受け入れる企業からすると、低リスク・低コストで、さまざまな領域から即戦力人材を集めることができます。また、既存社員が「副業・兼業」の外部人材から得られる刺激も、彼らのモチベーションやイノベーションにつながることなどが期待できます。最近、私はプロフェッショナル人材による「副業・兼業」を「社会人インターン」と勝手に表現しています。

岸野:なるほど。優秀な人材を確保・育成するうえで、企業が社員に成長機会を提供する必要がある一方、労働寿命が長くなるなかで、一企業だけで、その環境を提供し続けるのには限界があるかもしれません。「副業・兼業」という働き方によって、個人自らがさまざまな場で学びの機会を持ち、「学び続けることができる」というのは、非常に面白いですね。人材の確保の手法も、「新卒採用」や「中途採用」といったこれまでの概念にとらわれずに、多様な雇用形態・育成方法を検討する必要があると感じています。

エネルギー業界は、今までにない規模での大変革が起こり始めています。スケールの大きさゆえに変化が進みにくかったところへ、柔軟なアイデアをぶつけて大きな変化を起こさなくてはならないフェーズに入っています。弊社としても、エネルギー業界のトップランナーとして変革を先導し、日本のみならず世界に貢献していきます。そのためにも、ぜひ新しい風を起こせる変革者に飛び込んできてほしいです。

岸野 寛 様 略歴

1985年、東京大学卒業。同年、東京ガス株式会社入社。1992年、IMD(スイス)にてMBA取得。2009年に海外事業部長、リビング企画部長などを経て、2017年に常務執行役員就任。20194月より人事部、秘書部、総務部、広報部、サステナビリティ推進部を担当。

取材・文:田中 瑠子
カメラマン:渡辺 健一郎
記事掲載:2019/11/21

 

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