100年続くよりも、100回変わる会社であること

  • ヤフー株式会社
  • 代表取締役社長
  • 川邊 健太郎 様

日本最大級のポータルサイト「Yahoo! JAPAN」をはじめ、eコマース、フィンテックなど、常に時代の先を見据えた事業を展開しているヤフー株式会社。2018年2月には自社のビッグデータと企業や自治体などのデータを掛け合わせて分析し、そこから得られる知見をさまざまな事業に活用する「データフォレスト構想」を発表。企業や自治体、団体からの問い合わせは100を超えるなど、大きな注目を集めました。また、2018年10月からは、ソフトバンク株式会社との合弁会社を通じて、スマホ決済サービス「PayPay」の提供も開始しました。インターネットで社会を牽引してきたヤフーは、この先どんな未来を描いていくのでしょうか。株式会社ビズリーチの代表取締役社長である南壮一郎が、ヤフー株式会社代表取締役社長の川邊健太郎氏に話を伺いました。
(所属・役職等は取材時点のものとなります)

ヤフー株式会社 代表取締役社長 川邊 健太郎 様

株式会社ビズリーチ 代表取締役社長 南 壮一郎

フレキシブルな環境は、新規事業を生み出すスピードを速める

─この10年を振り返って、御社にとって特に影響の大きかった社会の変化は何ですか。

川邊氏(以下、川邊):2つあります。1つ目は、インターネットが社会に広く浸透したこと。2つ目は、日本全体が「働き方改革」に真剣に取り組み始めたことです。この社会の変化に合わせ、当社でもワークスタイル変革を推進してきました。例えば、自由に席を決められるフリーアドレス制の導入や、「どこでもオフィス」というテレワークの月の利用上限の拡大、育児・介護・看護を行う従業員を対象に週4日勤務(週休3日)を取り入れるなど、社員がフレキシブルに働けるように制度を整えてきました。

南:メディアでもよく拝見していますが、御社は「働き方改革」に向けたさまざまな取り組みを積極的に展開されていますよね。経営的な観点において、例えば、フリーアドレス制を導入して実際にどんな効果がありましたか。

川邊:1つあげるとするならば、新規プロジェクトを立ち上げるスピードが速くなりましたね。社員の固定席を設けていた頃は、会議を開くために、まず会議室を予約するなどの時間がかかり、非効率でした。現在はそれぞれのプロジェクトに必要なメンバーが近くに集まり仕事をしているので、みんなで話し合う必要があればすぐに集まって議論ができます。新規プロジェクトの立ち上げ時など、目線合わせが頻繁に必要なフェーズでは特に有効です。

南:新規事業やプロジェクトは、特にスピードと効率で成否が分かれますから、効果が大きそうですね。ちなみに、テレワークの利用上限を拡大したことについては、いかがですか。

川邊:時間や場所が自由になったので、社員が柔軟に働けるようになりました。当社は創業から23年がたち、育児や親の介護をする世代の社員も増えています。その結果、就業時間や勤務時間を自由に決めたいというニーズも増加し、これに応えました。オフィス環境・人事制度のフレキシビリティーを上げたことで、優秀な社員の離職を防げたり、他社から優秀な人材が入社してくれたりと、良い効果が生まれています。

南:事業内容や成長フェーズ、また職種によって、組織と個人の生産性向上の手法は変わりますが、御社であれば、日系大手企業のモデルケースのひとつとなりそうですね。また、御社が「働き方改革」に対して積極的に取り組むようになったのは、川邊さん個人の経験から必要性を感じたからでしょうか。

川邊:そういった点もありますが、時代の変化が一番大きなきっかけです。特に若い世代ほど、ワークスタイルの価値観の変化に強く影響を受けています。その結果、「古い価値観に縛られた働き方しかできない会社なんて入りたくない」という人も増えました。そのようななか、若くて優秀な人材にも「ヤフーに入社したい」と思ってもらうために、当社も変わっていく必要があると考え、ワークスタイル改革に取り組んできました。

また、中・長期的な視点で見た時に、イノベーションを生み出すための環境を整備しなければいけないという思いもありました。組織文化の面では、1万人以上の会社とは思えないほど、社内の風通しはよく、組織もフラットです。これに加えて、既にあるものを組み合わせて新しいものをつくる、つまりイノベーションを生み出すために、オフィス内で「情報の交差点」が生まれる環境が必要だと考えたんです。だから、社員同士のコミュニケーションを促す机をジグザグに並べたフリーアドレス制や、社内と社外の接点を増やすコワーキングスペース「LODGE」を導入しました。ちなみに、南さんから見て、当社はどのような会社に見えていますか。

南:まずは同じテックカンパニーとして、勝手ながら、時代を牽引し続ける「憧れの先輩企業」として見ています。また、1万人の組織へと成長する過程において、数多くの課題や問題に直面しつつも、特にこの10年間、変わり続ける姿を間近で見ながら、「企業が次のステージに進むには、常に変わり続けなければいけない」ということを社外から勉強させてもらいました。さらにありがたいことに、その激動と変化のなかを戦い抜いてきた川邊さんから、幾度となくビズリーチへの経営のアドバイスをいただき、すぐ社内で実践したところ、組織運営に大きな効果をもたらしたことが何度もありました。

川邊:そういえば、「ヤフーも導入している『1on1ミーティング』を導入したほうが良いよ」と南さんに何年か前にお勧めしましたね。当社で積極的に推進して、個人的にも手ごたえを感じていた「1on1ミーティング」を通じて、社員の主体性を引き出すことの重要性をアドバイスしたところ、すぐビズリーチでも始められていてビックリしました(笑)。

南:はい、川邊さんの熱い助言をいただき、すぐさま「1on1ミーティング」の制度作りに入りました。当社の「1on1ミーティング」の現在の社内実施率は95%で、コミュニケーションの根幹を担うまでに浸透しました。まだまだ改善しなくてはならない点は多々あります。しかし、評価面談を待たずとも、定期的に上司とともに、自分のキャリアや今後必要なスキルや経験など、業務以外のことを考える機会を得られたことは、社員にとってのみならず、会社や上司にとっても、成長につながっていると思います。

川邊:そこまでやり切ったのは素晴らしいですね。これからの時代、会社と社員の関係性はさらに大きく変化していくので、「1on1ミーティング」の重要性は増していくと感じています。また少し興味があるのですが、南さんは、他にヤフーの経営や組織運営を参考にしてきたことは何かありますか。

南:もっとも衝撃を受け、ビズリーチの経営に影響を与えたのが、数年前に、御社のマネジメントチームの顔ぶれが一気に変わったことでした。経営の中枢を若いチームへとバトンタッチをしていく姿に深く感銘を受け、当社も、御社のように変わり続ける会社を目指すため、数年前に、自分を含めた創業期からの取締役3名を、既存事業の経営から、新規事業の立ち上げをするための別の組織へと異動させました。ビズリーチ事業をはじめとする既存のHRテック事業の経営は、30代前半のメンバーを中心とした新しい経営チームに移管し、われわれ創業からの取締役は、本社付近のビルに物理的にも移動しました。

川邊:南さんはさまざまな企業を分析して、良いところをどんどん社内に取り入れていますよね。本業に固執していると、その事業が不利な状況になった場合に変化するスピードが遅くなり、対抗できなくなります。ですので、本業に依存しすぎず、新規事業をいくつか立ち上げておく必要があります。その点、御社はよく対処されているなと感じます。

事実、パソコンで事業拡大してきた当社が本業であるパソコンにこだわった結果、スマートフォンへの対応が遅れてしまいました。現在はその反省を生かし、複数の新規事業を進めています。

また、経営者として「会社を大きくしたい」「世の中の役に立ちたい」と思うのであれば、その先に何があるのか、どんな世界になるのかを見たいという「強い好奇心」も必要です。その好奇心を、われわれヤフーのマネジメントチームは持ち合わせていると強く感じています。

 

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